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作者のことば

「秋の月」原作者より

今回の作品は元々「いつもお前がそばにいた」(今井絵美子著・祥伝社)の装画で制作したものがベースになっている。
装画として描いたモノだったので「作品」という全く異なるベクトルに方向転換を試みるのは正直骨が折れた。
絵として私の中で既に「過去のもの」という認識だったからだ。
制作にあたってのポイントが猫であることは疑う余地はない。
では、この猫をどう新たに解釈し直すかが鍵になった。
様々な助言を賜り「猫は何を見ているか?」というコンセプトに至った時、
この作品のイメージはほぼ完成した。
結果として「月を眺める猫」というようになっているが「猫の眼差しが月を通じてさらに遠くまで眺めている」というのが本来の主旨である。これはデジタルデータだけでどうこうできる話ではない。
データではなく物質化(印刷)がどうしても必要なのである。

前回の「呱呱」同様、印刷に関してはアート印刷工芸さんに全て委ねた。印刷設計・製版・刷版は全て、
アート印刷工芸社さんでしていただき、多数の試作品も提示していただき今回の作品へと至った。
以前にも触れたが、私の場合「原稿(データ)→ 印刷」という過程を経ないと「作品」として成立することはあり得ない。
だから正直「作者」というのも少し意味が異なる。
あくまでも「印刷原稿の制作者」であり、それ以上でもそれ以下でもない。
アート印刷工芸社さんのご尽力がなければ「作品」として成立することはないのだ。

そういう意味ではこの作品や以前の「呱呱」はあくまでもチームとしての成果だと考えているし、
成果にも十二分に満足している。
そもそも印刷は共同作業であり、それぞれの役割を高度に果たすことにより完成される世界である。「作品」となるとこの要求は当然のことながら更に高いものとなるのだが、アート印刷工芸社さんは見事に応えてくれた。ここに改めて御礼したい。